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は、と息を吐き出して、ユーリは柔らかなソファに背中を預けた。部屋は暖炉で暖まり、居心地の良い温度になっている。
だが、一歩廊下へ出れば、寒さが肌を刺すことだろう。
眞魔国の冬は、埼玉よりも寒い。ユーリが住んでいた地域では考えられないが、この時期に雪が降ることも珍しくはなかった。
ゆるやかに過ぎていく時間。普段と何も変わらない、穏やかすぎるひとときだ。
隣に座る名付け親は、やはり今まで通り爽やかに微笑んでいる。
「なあ、コンラッド」
「なんですか?」
「……これ、ほんとにプレゼントになってるのか?」
ひどく平穏で、ただひたすらに優しい。特別なことなどない、いつかの祈り。離れていた時間があるからこそ、この日常が尊いと実感できた。
クリスマスプレゼントには何が欲しいかと、尋ねたのは昨日のことになる。地球のさまざまな国を旅してきた男が、その質問の意図を知らないはずがない。本当ならば、サプライズで考える予定だった。
何も思いつかなかったのは男がいつだって、無欲に見えたせいだ。
「勿論ですよ」
「いつも通りだろ」
「それでも。あなたを独占できるという瞬間が、俺には最高のプレゼントになるんです」
「………」
そういうことは、女の子に云うべきだ。歯が浮くような台詞を平然と吐く男が憎らしい。
こうして、いつだって保護者は一歩先も、二歩先も進んでしまうのだ。
だから、たまにはこの大人の余裕を崩してみたくなった。態勢を変え、彼の胸元を掴むとぐいと引き寄せる。
「おれだって、あんたと居られて嬉しいよ」
真っ直ぐに見つめれば、薄茶の双眸を大きくしている男の顏が近くにある。細かい銀の星が、やがてきらきらと輝き出した。
彼の瞳は、言葉よりも多くを物語る。
こんな表情を見られたから。きっと、サプライズのプレゼントは成功だ。
「メリークリスマス、コンラッド」
楽しいクリスマスを。
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